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経営者
会社が個人へ支払った対価は「給与」になるのか「外注費」になるのか?

これは税務調査などでもよく問題となる点です。
もし税務調査で「外注費」「給与」と認定されれば、多額の追徴課税が課せられることがあります。

会社にとって「給与」と「外注費」はどのような違いがあるのか、その判断基準、そして正しい契約の仕方などについてご説明していきます。

「給与」と「外注費」の違いとは?

「給与」と「外注費」は、大まかに以下のような違いがあります。

源泉徴収消費税社会保険加入
給与必要控除できない必要
外注費不要(一部例外あり)控除できる不要
給与

所得税の源泉徴収を必ずしなければなりません。
また消費税の計算上不課税取引のため、納めるべき消費税からの控除ができません。
そして社保へは原則加入となり保険料の負担が生じます。

外注費

所得税の源泉徴収が不要です。(ただし一部例外あり)
また消費税の計算上課税取引となり、納めるべき消費税から控除できます。
(ただし令和5年10月1日以降はインボイス制度導入により適格請求書発行事業者のみが対象となる)
そして社保への加入は不要です。

経営者にとっては「給与」よりも「外注費」の方が有利です。
できれば「外注費」で処理したいところです。

しかし「給与」にするか「外注費」にするかは勝手に決めていいものではなく、

契約内容や業務実態などの客観的な事実関係で判定しなくてはいけません。

ここが税務調査で問題となるポイントです。

「給与」と「外注費」税務調査のポイント

税務署側の視点  税務調査のポイント

税務調査では、
外注費で処理されているものの中に、給与に該当するものは無いか?」
・・・という視点でほぼ確実にチェックされます。

特に「専属の外注」については必ず厳しいチェックが待っています。

「外注費」が「給与」と認定されれば源泉税や消費税など多額の追徴課税が発生します。
「給与」と「外注費」の区分は判断が難しいケースも多く、注意が必要です。

ではその判断基準はどうなっているのでしょうか?
まずは判断基準を確認していきましょう。

「給与」と「外注費」の判断基準

基本的な判断基準は以下の通りです。

給与と外注費 基本的な判断基準

「給与」
 雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価

●「外注費」
 請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価

ただし形式だけこのようにしても、税務調査では実質で判断されます。

6つの実質的判断基準

そこで実質的な判断をするための基準が設けられています。

給与と外注費  6つの実質的判断基準

① 代替性
② 指揮命令監督
③ 時間的な拘束
④ 請求金額の計算と請求
⑤ 未引き渡し商品等の責任
⑥ 用具・材料・移動手段提供

1
代替性


「作業者本人が作業ができないときなどは、他の作業員を手配することが認められるか」

認められなければ「給与」の可能性が生じます。

2
指揮命令監督


「作業の具体的な内容について指揮監督を受けるかどうか」

受けている場合は「給与」の可能性が生じます。

3
時間的な拘束


「報酬の支払者から作業時間を指定されるなどの時間的な拘束を受けるかどうか」

受けている場合は「給与」の可能性が生じます。

4
請求金額の計算と請求


「外注先が自ら請負金額を計算し、請求書を作成しているかどうか」

支払者が計算して請求書を作成している場合などは「給与」の可能性が生じます。

5
未引き渡し商品等の責任


「引き渡していない完成品が不可抗力のため滅失してしまった場合は責任を追うか」

支払者に責任がある場合などは「給与」となる可能性が生じます。

6
用具・材料・移動手段提供


「材料や用具等を、作業者本人が負担しているかどうか」

支払者が負担している場合は「給与」の可能性が生じます。

その他にも、

  •  給与規定に該当する手当(残業手当、家族手当や通勤手当)の支給がないか?
  •  締め日や支払日は給料と違うか?

・・・などを勘案して総合的に判断していきます。

外注先についての判断基準

税務署側の視点としては、外注先について下記のような部分の確認もしているようです。

税務署側の視点  外注先について

✔ 請求金額の消費税が外税か?
✔ 事業所得での確定申告があるか?
✔ 消費税の課税事業者となって申告をしているか?

判断要素は複数あり、どれか一つに該当すれば確定ということではなく、総合的に判断されることになります。

「外注費」を「給与」と判断されない為の対策

それでは「外注費」を「給与」と判断されないための具体的な対策を見ていきましょう。

対策① 契約書作成

  1. まずは可能な限り上記の判断基準を意識して契約書を作成します。
  2. そのうえで実務上もなるべくこの判断基準で外注に該当するように運営します。
  3. 消費税については税込みはなるべく避けて、外税表示で計算したほうがいいでしょう。

対策② 法人設立

このような問題が発生するのは、個人の方への支払いです。
特に専属で働いている個人への対価が問題となります。

そこで法人設立で対応するということも考えられます。

相手が法人であればどんな条件であっても給与ということはあり得ません。

対策③ 外注先の申告確認

それから支払先の申告状況についてもできれば確認したいところです。
外注先が確定申告をしていない場合は給与と疑われる可能性が出てきます。

特に専属の外注先についてはこのあたりのケアもすべきかもしれません。

「給与」と「外注費」その違いと判断基準・まとめ

いかがでしょうか?
個人の専属外注がいる場合は税務調査で問題になる可能性があります。
「外注費」として支払いっていたものが、税務署から「給与」と認定されてしまわないように、現状の契約内容や本人の認識などをしっかり確認しておきましょう。