最近はいろいろなところで「事業承継」のことが取り上げられています。
「事業承継、事業承継とよく聞くけど、いったい事業承継ってなんなんですか?」
このような質問を受けることが多くなってきました。
そこで今回は「事業承継」の意味について説明したいと思います。
「事業承継」の意味
事業承継の意味は、その名のとおり「事業を承継すること」です。
ただそうは言っても、承継という言葉は一般的ではなく少し難しい感じがします。
もう少し簡単な言葉でいうと「事業をわたすこと」となります。
個人事業主であれば、自分が営む事業を他の人にゆずることですし、
会社経営者であれば、社長を他の人にゆずることになります。
事業承継の方法や形式にはいろいろなものがあり、
引き継ぐ相手や財産の引継ぎ方法によってたくさんの種類があります。
今回は、大きく2つに分類してご説明したいと思います。
(1)親族内承継
親族に引き継ぐ事業承継を「親族内承継」と言います。
自分の親族である息子さんや娘さん、兄弟姉妹、甥っ子や姪っ子に
事業を引き継ぐ事業承継です。
親族内承継の場合、事業用財産は無償で引き継がれることが多くなります。
(2)親族外承継
他人に引き継ぐ事業承継を「親族外承継」といいます。
自社の役員や社外の他人に事業を引き継ぐ事業承継です。
親族外承継の場合、事業用財産は有償で売買されるのが一般的です。
よく言われる「M&A」というのがそれに該当します。
「M&A」も事業承継の一種ということになりますね。
事業承継と一言で言っても、
・誰に事業を引き継ぐか?
・対価としてお金をもらうかもらわないか?
などによって、いろいろな種類の事業承継があるということになります。
ただすべてに共通することは「自分の事業を他の人にわたすこと」です。
事業承継とは「自分の事業を他の人にわたすこと」なのです。
「事業承継」の具体的手続き
事業承継の意味はおわかりになったと思います。
それでは事業承継をしようと思ったとき、具体的に何をすべきなのでしょうか?
一言で「事業を他の人にわたす」と言っても何をすべきか、
なかなか具体的にイメージできないのものです。
具体的にすべきことは、実は単純明快かつ簡単です。
【事業承継で具体的にすべきこと】
(1)代表者の変更
(2)事業の財産債務の引き継ぎ
たったこれだけですが、実はここにたくさんの問題が生じます。
しかし具体的手続きに関してはこれだけであることに間違いはありません。
具体的手続きと想定される問題をそれぞれ説明していきましょう。
(1)代表者の変更
具体的手続き (代表者変更)
個人事業の場合は、事業主を変更して各種届出を行うだけですし、
会社の場合は、代表者の登記変更を行うだけです。
具体的には司法書士などの専門家に依頼すれば終了ということです。
想定される問題点 (代表者変更)
手続き自体は単純明快ですが、そこに様々な問題が生じます。
・銀行借入金などの個人保証
・営業上必要な個人的資格や免許
・従業員との関係性
・各種取引先との信頼関係
・個人名義の不動産など事業用資産の取り扱い などなど
このように気をつけなればならないポイントが沢山あることになります。
(2)財産債務の引き継ぎ
具体的手続き (財産債務の引継ぎ)
こちらも具体的手続きについては単純明快です。
会社の場合は会社の株式を後継者へ名義変更するだけで済みます。
個人事業の場合は会社に比べると手続きは煩雑になりますが、
それでも資産と負債の名義を一つ一つ変更していけばいいだけです。
これらの手続きも身近な専門家へ相談・依頼すればすぐに対応してもらえます。
想定される問題点 (財産債務の引継ぎ)
しかしここでもやはり問題が生じます。
ここが事業承継の具体的手続きで最も問題となるポイントです。
事業用財産や会社の株式というのは、どうしても金額が大きくなります。
この「金額の大きさ」が問題となります。
金額の大きさから生じる主な問題は次のとおりです。
・財産の引き継ぎにかかる税負担
事業用財産や会社の株式を無償で後継者へ引き継ごうとすると
税負担が生じてしまいます。
亡くなった際に引き継げば相続税、生きているうち引き継げば贈与税です。
「事業承継」における最大の問題は、この引き継ぎにかかる税負担です。
財産の引き継ぎ自体は簡単ですが、そこに多額の税負担が生じることから
この部分は事業承継において最大の注意ポイントとなっています。
・他の相続人(兄弟など)とのバランス
また後継者だけに財産が集中すると他の相続人から
遺留分を請求をされる可能性があり、こちらに対する配慮や対策も必要となります。
財産の移転については他の相続人とのバランスに考慮する必要があります。
「事業承継」の開始前に検討すべきこと
事業承継の具体的手続きに関しては、簡単だということがおわかりいただけたと思います。
しかし実行するにあたっては、沢山の注意すべきポイントがあります。
もう一度まとめますと次の通りです。
【代表者変更の際の注意点】
・銀行借入金などの個人保証
・営業上必要な個人的資格や免許
・従業員との関係性
・各種取引先との信頼関係
・個人名義の不動産など事業用資産の取り扱い などなど
【財産の引き継ぎ】
・財産の引き継ぎにかかる税負担
・他の相続人(兄弟など)とのバランス
事業承継の手続きそのものはそれほど難しくはないのですが、
これを実行するには会社や財産の現状、後継者の性格、取引先、家族など
いろいろなところに注意をはらわなければなりません。
まずはご自身の事業の状況から想定される問題を把握することが重要です。
そしてそれをきちんと解決できる「事業承継計画」が必要となります。
「事業承継」についてのまとめ
事業承継とは「自分の事業を他の人にわたすこと」です。
そしてその手続自体は、実はそれほど難しくはありません。
しかし手続き実行にあたっては様々な問題が生じることがあるので、
注意すべきポイントについて事前の状況把握と綿密な計画が必要になります。
備えあれば憂い無しです。
あなたの会社と事業について、
「事業承継をした場合にどのような問題が生じるのか」
ご検討されてみてはいかがでしょうか?
まずは身近にいる専門家や専門機関などにご相談されることをオススメします。